銀行の生き残りをかけた方策まとめ。キャッシュレス化はむしろ追い風?
2022/06/05
かつて銀行は華々しい職業として有名でした。高給取りの職業で、学生たちの憧れでした。
しかし、昨今は銀行の存在感が薄れてきています。さて、銀行はどうやって生き延びようとしているのでしょうか?
目次
銀行の収益減少と対策
銀行はかつては学生の人気就職先ランキングの常連でした。1989年は日経平均が最高値を記録した年ですが、その年の世界の時価総額ランキングの上位50社のうち、なんと11社を日本の銀行が占めていました。
しかし、昨今ではメガバンク、地方銀行ともに経営不振が続いています。その理由としては長期間続いている超低金利時代や人口減少、地域の過疎化、異業種からの銀行参入などです。
銀行は長らく、融資金利と預金金利の利ザヤで収益を得ていました。しかし、日本銀行がバブル崩壊から経済を復活させるためゼロ金利政策を打ち出し、さらに2016年にはマイナス金利政策に踏み切ったことで、銀行は金利差で収益を得ることが難しくなりました。
また、人口が減少したり、地域が過疎化すれば、銀行を利用する人が減ってしまいますし、ネットバンクなどの従来の銀行業界以外からの銀行業界への参入で、限られた利用者の奪い合いになっているのです。
そこで銀行は新たな収益源を確保するため、保険や投資信託などの運用商品の販売に力を入れたり、法人向けサービスの報酬やATM利用手数料などで利益を上げようとしています。今までは無料だった口座維持手数料を徴収する銀行や、ATM利用手数料の値上げに踏み切る銀行も出てきています。またフィンテックにより、銀行業務のスリム化を図り、効率的な経営を目指しています。
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銀行の経営状態をチェックするには
銀行の経営状態を把握するには、貸出残高と経常利益を見ると良いです。
貸出残高とは、銀行がいくら個人や企業にお金を貸したのかの指標です。経済が順調に成長していれば、銀行は企業にお金を貸し、そのお金は企業の設備投資に回され、従来の商品の改善や新商品の開発ができ、その商品が売れれば従業員の給料が増え、従業員はさらに銀行に預金し、銀行はさらにお金を企業に貸し出せるという好循環が起こります。
しかし、バブル崩壊で貸し出したお金が返還されない不良債権が多発したことで、現在の銀行は融資審査を厳しくし、優良な企業にしか貸さなくなっています。2019年には1997年から始めて貸出金が500兆円まで回復しましたが、これは個人や住宅ローンが主な割合を占めていて、いまだに企業向けの融資は増えていません。ちなみに三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の3大メガバンクだけで、日本全体の融資総額の半分を占めています。
また、経常利益は本業である銀行業務を含めたすべての業務から生まれた利益を表しており、その年だけの限定的な利益は含まれていないため、銀行の通常運転時の経営状態が把握できます。
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キャッシュレス化でも銀行の預金残高は変わらない
日本政府は2014年より、国策としてキャッシュレス化を推し進めてきました。キャッシュレス化によって、現金決済でのコストの削減や、国全体の生産力向上、消費向上を目指しています。もちろん現金で行われやすい脱税を減らすのも目的の1つです。
韓国はほぼ100%キャッシュレス化が進んでおり、日本も2025年までにキャッシュレス決済比率を40%にし、将来的には世界最高水準に近い80%を目指しています。しかし現状は、日本のキャッシュレス決済比率は30%弱で、目標には程遠いレベルです。
キャッシュレス化は支払い方法が多様化しただけであり、キャッシュレスを利用するには、アプリや電子マネーにお金を入れるために預金が必要なので、キャッシュレス化でも銀行の預金残高はそれほど変わらないと予想されます。
また、銀行にとってはキャッシュレス化は追い風になる面もあり、銀行はATMを設置しやすい1階に構えることが多いですが、キャッシュレス化でATMがいらなくなれば、家賃の安いビルの2階以上の空中店舗に店を構えることができ、経費削減になります。
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いつでも現金を引き出せるサービス
地方銀行には、移動式店舗と言うユニークな取り組みがあります。トラックの中に銀行の窓口やATMを作り、交通が不便な地域や本支店から遠い地域に、銀行自ら出張して営業するのです。
また、セブン銀行やイオン銀行は、移動型ATM車両を用意しています。誕生のきっかけは東日本大震災で、災害時でも金融インフラとして機能するために作られました。
他にはキャッシュアウト・サービスという物があり、デビットカード機能で、スーパーなどのレジで自分の口座から現金を引き出すことができます。このサービスは、無線を用いるので、災害でATMやクレジットカードが利用できない時も使えます。さらには、預金口座を登録したスマートフォンアプリを使って、駅の券売機で現金が引き出せるサービスも始まっています。
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フィンテックに積極的な地方銀行
フィンテックとは、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を組み合わせた造語で、金融にIT技術を導入した新しい金融商品やサービスの事です。電子決済のペイペイやラインペイ、融資やローン審査ができるJ.Score、個人向けの財務管理システムのマネーツリーなどがあります。
銀行がフィンテックを取り入れれば、セキュリティの向上や新しい顧客サービスを産んだり、コストの削減ができます。実は地方銀行の方がフィンテックを積極的に取り入れようとしています。
その理由は、営業や人件費の圧迫、人口が少ないので営業効率が悪いし、新規顧客獲得も難しいなどです。これらを解決しなければ合併や再編の道を辿らなければいけませんが、それを避けるため、決済と同時に銀行口座から代金が引き落とされるアプリを開発したり、人間の代わりにAIが応答するチャットボットを開発したりしています。
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手形や小切手は絶滅する?
手形や小切手の歴史は古く、明治時代の1879年に日本初の手形交換所が最初となります。手形は記載された期日後にしか現金化できませんが、小切手は期日前でも現金化できます。
手形や小切手の使用量のピークは1990年ですが、事務処理の煩雑さや、手形印紙税というコストの問題などで、2013年に政府主導で手形や小切手の電子債権化ができる「でんさいネット」が誕生しました。
手形の交換高は、ピークの1990年から95%も減少していますが、でんさいネットの取扱高は手形交換高の10%にも及びません。つまり、紙の手形や小切手は一定の需要があり、将来的には無くなるでしょうが、すぐに絶滅するわけではありません。