ジャニーズ性加害事件でのテレビの忖度。ジャニーズの名前は報道せず
ジャニーズ事務所の創業者で前社長の故ジャニー喜多川氏に関連する性加害問題について、事務所が公式に謝罪を行ったことが大きな話題となっています。このニュースは国民にとって大きな関心事となり、その報道の取り扱いについて、民放キー局間で温度差があったことが注目されています。
事務所の謝罪後、テレビ各局が一斉に報道を行ったものの、ニュースの取り扱い方には多様性が見られました。民放各局の情報番組では、その日のトップニュースとして取り扱うのが一般的な性格のニュースであるにも関わらず、ジャニーズ事務所の問題については、番組の途中で短時間で伝え、すぐに次の話題に移る、あるいはニュース項目全体を見せるテロップにすら「ジャニーズ」の文字を掲載しないなど、目立たせない姿勢を見せていました。これは、ジャニーズ事務所が多数の人気タレントを抱え、テレビ局にとって大きな影響力を持つため、事務所の意向を配慮した結果と考えられます。
一方、NHKは「おはよう日本」でジャニーズ問題を5時台、6時台、7時台のトップニュースとして取り扱っていました。ニュースバリューを考慮すれば、NHKのような対応が通常であり、民放各局の扱いは非常に不自然であると言えます。
また、フリーアナウンサーの宮根誠司がキャスターを務めるフジの「Mr.サンデー」と日テレ「ミヤネ屋」では、トップ項目でジャニーズ問題を報道していました。これは宮根キャスターの意向が反映された可能性があります。これらの事例を通じて、テレビ報道における「配慮」や「忖度」の問題が浮き彫りになっています。
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「街の声」や「専門家の声」の取り入れ方は報道の質を左右する要素です。大きな事件が起こるたびに、「街の声」を取り入れるスタイルが一般的で、これは視聴者の反応を反映させる手法として用いられます。2014年、安倍首相の衆議院解散時に自民党が「街角インタビュー」の公平性について要請を行いました。それ以降、報道機関は政治に絡む際の「街の声」の取り扱いに慎重になり、政権や政治の影響を避ける傾向が強まりました。また、ジャニーズ事務所などの権力が絡む場面でも「街の声」の使い方は慎重になることが求められます。
一方で、報道は専門家の意見を伝える役割も果たすべきです。専門家の意見を取り入れることで、視聴者に多角的な視点を提供し、問題理解を深める機会を提供することができます。しかしながら、ストレートニュースとなりがちな現状ではこの役割が十分に果たせていません。性被害に関する報道では専門家の見解が重要であり、その専門家の見解を引用することでより正確な問題理解につながります。一部番組では被害者支援を行う専門家や性暴力被害相談を行うNPO、子どもの権利保護に詳しい専門家の見解を引用し、報道の質を高めています。
報道においては、「街の声」や「専門家の声」を適切に取り入れることが求められます。それは視聴者に対する多角的な視点の提供と問題理解の深化、さらには公平中立な報道の実現に直結します。