アンラ・マンユはルシファーと対立?アンラ・マンユが創造した16の災難とは?
ゾロアスター教の善悪二元論では、アンラ・マンユまたはアフリマンは、最高善である神アフラ・マズダーに対抗して、絶対悪として表されます。創世神話によれば、世界の始まりに創造神スプンタ・マンユがもう一人の創造神アンラ・マンユと出会いました。そして、スプンタ・マンユは世界の二大原理のうち「善」を、アンラ・マンユは「悪」を選択し、それぞれの原理に基づいて万物を創造したとされています。ヴェンディダード(Vendidad)の第1章によると、アフラ・マズダーが光の世界を創造するとすかさずアンラ・マンユは対抗すべく冬、病気、悪などの16の災難を創造したとされます。さらに、アンラ・マンユはアフラ・マズダが創造した世界を破壊し、被造物を殺戮するために悪竜アジ・ダハーカを生み出しました。
アフラ・マズダに敗れた後、深闇に落とされたアンラ・マンユは徐々に勢力を盛り返し、再びアフラ・マズダとの戦いを続けるとされています。アンラ・マンユは実体を持たず、この世に現れる際にはヘビやトカゲの姿で出現するとされています。その配下には大魔ダエーワやアジ・ダハーカなどがいます。英雄スラエータオナがアジ・ダハーカを退治しようとしましたが、剣を刺してもそこから爬虫類などの邪悪な生き物が這い出すため、これを殺すことができませんでした。そのため、最終手段としてダマーヴァンド山の地下深くに幽閉したという説話も存在します。
ルドルフ・シュタイナーの人智学におけるアフリマン概念は、悪の二大原理の一つであり、もう一つはルシファーです。Ahrimanと綴られ、日本ではアーリマンと表記されることもあります。シュタイナーは宇宙と人間の進化の過程で、人間存在に影響を与えたさまざまな存在に言及しており、アフリマンもその一つです。アフリマンの影響によって、人間は自然科学・技術・経済を発展させましたが、同時に経験と五感の領域だけを信じ、物質的充実のみを追求し、霊と精神的価値を見失い、世界を狭窄化させると論じています。
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ルドルフ・シュタイナーによれば、ルシファーはアンラ・マンユと対立しているようです。アンラ・マンユの対立相手はアフラ・マズダーですが、ルシファーとアフラ・マズダーを同一視することは可能でしょうか?また、ルシファーとミカエルが兄弟であるという説は、アフラ・マズダーとアンラ・マンユが兄弟であるという話の翻訳から来ているという指摘があります。
この考え方から、ルシファーとアフラ・マズダーが同一視できるのではないかという疑問が生じましたが、果たしてどうでしょうか?ルドルフ・シュタイナーは、ルシファーとアーリマンを悪の二大原理として位置付けており、人間が物質的なものに執着して精神性を低下させる(アーリマン)、また、人間が行動や選択の自由を行使するがそれが悪行につながる(ルシファー)という点で、両者を悪と規定しています。したがって、アフラマズダーとルシファーを同一視する余地はほとんどないと思われます。この二者がどこで対立していると述べられているのかは明確ではありませんが、もし対立しているとすれば、それは単なる悪における「縄張り争い」のようなものと考えられます。